映画『日本の青空』上映会のお知らせ

2019年4月22日

日本の青空チラシA4表来る2015年12月19日(土)、青山学院大学青山キャンパスにて、映画『日本の青空』(大澤豊監督、2007年)の無料自主上映会とゲストトークを行います。主催は私と森島豊先生(総合文化政策学部)ですが、勝手に「青山自由民権プロジェクト」というユニット名を名乗っております。このレトロな響き♪が気に入っております。

この映画は、戦後60年の節目にちなんで「日本国憲法制定の原点を問う!」(劇中に出てくるセリフ)ということで、「憲法研究会」のまとめ役だった憲法学者・鈴木安蔵をフィーチャーした作品です。言うまでもなく今年は戦後70年なので、10年近く前の映画なのですが、見てアッと驚くわけですがなぜかいまの状況とビンビン共鳴しております。

ご存じない方もおられると思いますが、憲法研究会とは終戦当時の民間の知識人集団で、7名が名を連ねています。1945年12月26日、この研究会が自分たちの「憲法草案要綱」(通称:憲法研究会案)を政府ならびにGHQに提出しました。でご存じない方もおられると思うのですが、この草案がいわゆるGHQ草案のベースとなるのです。

「いまの憲法はアメリカに押しつけられたものだから、自主憲法制定!」とよく改憲派の方々がおっしゃいますね。自民党などはそれを党の綱領としているほどです。が、これは単純に事実として誤認ということになります。実は私も改憲の可能性を全面否定するものではありませんが、少なくとも「押しつけだから」という理由は成立しません。だいいちアメリカから「こういうふうに憲法を直せ」と指示された中に、自発的に民主化しろとはありましたが、「国民主権と書け」という項目はありませんでしたし。この事実はいろんなところで、たとえばとくに安倍晋三氏のお祖父さんの岸信介内閣のとき自民党を中心に発足した「憲法調査会」(座長:高柳賢三)あたりなんかで、とっくに明らかになっています。[amazonjs asin="B000JALA7S" locale="JP" title="日本国憲法制定の由来―憲法調査会小委員会報告書 (1961年)"]

そもそも「押しつけだ」うんぬんは、「押しつけられて腹立つ!」という感情論であって、中身がどうなのか、いいのか悪いのか得なのか損なのかという意味ある議論ではありませんよね。しかも、この件での権威である古関彰一先生ほかの皆さんが的確に指摘されているように、「誰が、誰に押しつけたのか」がポイントです。[amazonjs asin="4006002157″ locale="JP" title="日本国憲法の誕生 (岩波現代文庫)"]

最近ようやく浸透してきましたが、そもそも憲法は、国民(人民)が国家(政府)に「押しつける」もの、でしたよね。憲法研究会の人々は、戦前・戦中に政府や軍部に痛めつけられてきた人々です。そういった人たちが、強大な権力をもつ政府に対して、さすがに自力で憲法を「押しつける」ことはできなかったにしろ、彼らにとっては逆に敗戦こそがチャンスで、アメリカが代わりに結果的に彼らの思いを政府に「押しつけ」てくれることになったわけです。めでたしめでたし。

ですので、いま「押しつけられた! 悔しい!」とか言っている人は、事情がわかっていない人を除けば、当時の政府の気持ち――たとえば松本烝治国務大臣の気持ち――になっている人たちだということになります。つまり、戦前のエスタブリッシュメント、財閥系の人、国体護持者、天皇主義者、もしくはそれらになぜかシンパシーをもっているような人たちです。戦前戦中の政府中枢の直系の子孫である安倍晋三首相なんかまさにそうでしょうね。こういう人たちが勢力を増すのは、文字どおり「帝国の逆襲」です。

でも、われわれの大多数は権力に縁のない庶民でしょう。大したこともない政権批判程度のことでいちいち治安維持法で引っ張られるような世の中では困ります。他方でろくでもないヘイトスピーチは容認されているのに。とか言っていると、マッカーサーがせっかく廃止にしてくれた治安維持法ですが、うっかり秘密保護法として復活していますね。戦争法案も新機軸の人間かまくらによって強行採決?されてしまったし、「憲法? 何それおいしいの?」てな暴走政府には一刻も早く退陣いただいて、全部巻き戻さないとヤバいです。

まさに「ジェダイの帰還」が待たれる次第ですが、待っててもダメで、われわれ一人一人が微力ながらもジェダイとなる覚悟を決めなければいけません(思うんですが、ジェダイの騎士は戦闘はしますが思想的には明らかに左派・リベラルですよね? 右派の人たちは『スター・ウォーズ』シリーズでもシス側に感情移入してるんでしょうか。憎しみのパワーを使ったほうが強いとか、ダークサイドの力も使わないのはバカだとか平和ボケだとかって)。

脱線しましたが、大日本帝国でない日本国の「国民主権」の思想的ルーツ、それについてはこの映画を見ていただき、またわれわれのトークを聞いて、史実を知っていただきたいと思います。改憲をするのかしないのか、話はそれからです。日本の国民主権を、取り戻そう! てなことでぜひ、お誘い合わせのうえご来場いただけましたら幸いです。

Ps. ここにも私の書き物のリンクを載せておきます。