第9回口頭弁論の報告
7月9日(金)10時より、第9回口頭弁論が行われました。
今回は、こちら側から「第7準備書面」を提出し、本件で問題になっているのは、公人の政治的姿勢や言動に関する表現行為の名誉毀損であり、通常の表現行為に関する名誉毀損とは異なる、という点を論証しました。
前回の「第6準備書面」では、ヨーロッパ人権裁判所やアメリカ連邦最高裁判所の判例法理は、民主主義社会においては公人の社会的評価は自由で開かれた議論によって決せられるべきであるという「民主主義の基本中の基本」を前提として、プライバシー/名誉よりも公共的言論の自由のほうが優先され、公人に対する名誉毀損の成立が極めて限定的にのみ認められている、ということを紹介しました。
今回の準備書面ではこれを敷衍し、日本も批准し、日本の裁判所においても法的拘束力を有する自由権規約(国際人権B規約)及びその解釈基準であるヨーロッパ人権条約上も、公人の名誉毀損を制限的に考える解釈が示されていることから、日本の司法制度の中でも同様に考えられるべきであり、現にそのような立場で判断した裁判例も存在すること、被告=反訴原告(中野)のツイートも原告=世耕大臣という公人中の公人の反人権的な政治的態度・言動の由来を問う言論にほかならないことから、中野のツイートによって世耕大臣の社会的評価が低下したとはいえない、ないし仮に社会的評価が低下しているとしてもそれは法的保護に値しない等として、これらの表現はいかなる観点からも名誉毀損にはあたらないこと等を主張しました。
ある表現が、公人の社会的評価を低下させうるものだとしても、公人の言動や思想、適格性のような公益性の高い問題については、民主主義社会においては最大限自由な議論がなされるべきであり、その中で公人の社会的評価が決められるべきものです。公人側が公的な反論を全く行わず、発言者に対して直接・個別に訴訟を起こすなどということは、公人に対する自由な議論を萎縮させ、民主主義の根幹を揺るがす行為であり、著しく不適切です。その意味で、この訴訟は日本社会の民主主義の行方を決定づける重要な分水嶺となりえます。といったことを小川弁護士が口頭で弁論しました。
これに対し原告=反訴被告(世耕議員)側は、「もちろん公共的議論の重要性はよく理解していますが、それでもなお、この場合は名誉毀損は成立すると考えます」とし、しかし「もし反論する必要があるということでしたら反論します」と消極的な様子でしたが、裁判長は「やはり被告が重要だと主張している点、特に本件は公人の名誉毀損の成否が問題になっており、通常の名誉毀損とは異なる点について原告がどう考えるのか知りたいので、反論してください」ということになりました。
この憲法や国際条約はもちろん、民主主義社会の基本を蔑ろにした今回の違法な訴訟を提起したことについて、なぜ提起したのか、いずれ世耕議員自身を証人喚問し、直接に問い糾したいと思っています。
次回期日は8月31日(火)10:10からです。