川内博史さんのお話(1)――原発編

2018年7月9日

先日書いたように、中野ゼミ開闢以来空前の豪華スペシャルゲストをお招きしました。ひょんなことで知遇を得ることができた、前衆議院議員の川内博史さんと平智之さんです。

幸運なことに、このお2人にゼミに来ていただき、お話を聞くことができました。大学のゼミという場所でお話を聞く/ゼミ生にお話を聞かせるというとき、「政治家」という職業の方は通常あまりお会いしない興味深いインタヴューの対象、インフォーマントであるわけですが、それだけではなくて、このお2人のお話なら絶対に勉強になると思いました。なぜなら、お2人とも「言葉」が非常にクリアーだからです。

川内さんには、合宿前にすでに一度ゼミでお話をいただいていました。そのときのタイトルは「この国の真実を語る」。合宿でパート2もやるのでこのときはパート1。具体的には福島第1原発の事故原因についてです。分厚い資料(すべて東京電力や担当官庁からの文書)を配布していただき、それを参照しながら、昨年川内さんが自らカメラを持ち込んで撮影した、壊れた原発の内部の映像を見せていただきました。

今日はその内容をかいつまんでお示しします。以下、お話の内容をまとめた文責は中野にあることをご承知ください。もしご本人からの訂正事項などありましたら随時手を入れます。

福島第1原発1号機内部の映像は、ご本人のHPからも見られますが、ここにも埋めこんでおきます。

まず、この壊れ方がひどいですよね……。2013年3月の時点でまだ片づけられないわけです。

ポイントは、この原発は津波で壊れたのか、その前に地震で壊れていたのか、です。ここが重要なのは、川内さんの地元の鹿児島県・川内原発をはじめとして、現在進められようとしている原発再稼働のための基準が、概ね津波対策がされていればOK、というようなゆるい基準となっているからです。もしも地震対策もしなさいということになると、対策は困難で、現存するほとんどの原発の再稼働は難しくなります。だからこのポイントが重要なのです。

さて、この原発は津波で壊れたというのが、東京電力と国の説明ですが、川内さんは地震の時点で配管等がすでに損傷していた可能性を指摘します。

  1. nature記録によると、せっかく自動で動いていた「非常用復水器(IC)」を手動で止めている。記録には「手順書あり」とあるが、じゃあその手順書見せてください、と言ったところ出てきたのが、真っ黒黒塗りの手順書。これはネイチャーの表紙にもなった。その後手順書の内容が開示されたが、やはり手順通りでなかったことが確認された。
  2. 原発建屋の4階と5階のあいだの大物搬入口のフタ(5.7m四方、1.5tの鉄板)が、下から上に吹き飛んでいる(フタ自体は所在不明だが、少なくとも下階には見つからない)。通常水素爆発であれば5階が爆発するはずだが、このフタがないことから、少なくとも(格納容器や非常用復水器のある)4階でも爆発があったはずと考えられる。現場の東電社員もその可能性を認めた。
  3. 5階だけの水素爆発だとすれば着火源が何かがわからない。4階であれば、炉心溶融で炉心は2000度以上になっているので、その周辺でも水素の着火点には達する可能性が高い。したがって着火源の説明はつく。

という点などから、津波で全電源が喪失される前、地震の段階で配管損傷があったのではないか、と推定します。

川内さんも慎重を期して「断定するつもりはない」とおっしゃいます。が、「事故原因がまだ完全には解明されていない、ということは断定できる」とします。それはそうですね。したがってもちろん、原発の再稼働は進めるべきではない、という結論になります。

ちなみに、この映像を撮るために30分中に入って、11ミリシーベルト浴びてしまったと。政治家というか、どちらかと言えば「ジャーナリスト魂」だなというところですが、国政調査権のある国会議員(当時)だからこそできる取材かなと思いました。また学生たちの質問にも、ひとつひとつデータを示しながらお答えいただきました。川内さんの持ち味は、「自分の足で集めたデータ」ですね。

それにしても、子どもなんかによく言うじゃないですか。「ひとつのおもちゃを片づけてから、次のを出しなさい!」って。東京電力もですね、百歩、いや一万歩譲って、他の原発を再稼働してもいいけど、するなら福島第1の事故原因は完全に明らかにして、しかも完全に片づけて、かつ文句のつけようがないようにちゃんと対策してからにしてほしいですね。つまりできないよねということですが。