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受験と資本主義,それによって歪む人たち

  • 2010-02-12 (Fri) 17:14
  • 雑文

落ちたって、いいじゃん! 逆転発想にこそ難関中学合格のカギがある

著者/訳者:金 廣志

出版社:角川書店(角川グループパブリッシング)( 2009-10-02 )

単行本 ( 245 ページ )


受験シーズンである。

うちの大学も入試期間であるが,世間では中学も高校もその他もろもろも受験シーズンなのである。

愚息も中学を受験し,どうにか第一志望校に合格して,それはたいへんよかったのだが,塾や学校や地域まで空気が荒んでいて,こんなことでいいのかという思いでいっぱいだ。そこで気づくのが,「合格=人を蹴落とす」という発想をしている人があまりに多いということだ。塾でもそのような空気が当たり前らしい。

私自身が塾で中学受験の準備をしていたときは,そんな雰囲気ではなかった。関西だし,30年前だから,違ったのかもしれないが,ともかく,「ここにいる全員で合格しようぜ」というムードだったし,塾の先生もそう誘導していた。「競争」というのはつねに厳しいものだけれど,そういうムードであれば,よい意味で切磋琢磨できるし,能力も発揮できるものである。同級生たちが単なる「ライバル」ではなく,「戦友」となるからだ。

それなのに,塾にも学校にも「友達」がいなくなってしまっているのが現状だ。私にとっては,塾で一緒だった連中は,いまだによい友達なのだが,息子にとっては一刻も早く離れたい相手のようである。ずっと敵視されていて,いつもお前はオレより塾のクラスが下だとか,何だとか言われ続けてきている。だいたい,双方が同じ学校に合格して,同級生になる可能性も十分あるではないか。彼らはいったいどの顔をしてその学校に行くつもりなのだろうか。

とか言っていると,私の周りに限っては,そういう心の汚い者はやっぱり結果が出ていない傾向にあるようだ。そのように子どもを批判するのは気が引けるが,親がつねづねそういう教育をしているから,子どもがそういう考えになるのである。そういう親たちは平気で差別的なことを口にする。

受験という競争でほんとうに大事なのは,自分に勝つことであって,他人に勝つことではなく,まして他人を蹴落とすことではないのである。さっきテレビに荒川静香さんが出ていたが,彼女も他人の演技をいっさい見ずに金を穫ったのであった。自分がしっかり自分の力を出せるかどうかだけ考えればいいのに,他人の足を引っ張ろうとする連中はまことに困る。受験に勝っても人格が歪んでは元も子もないのに。

資本主義もやはり同じ構造の問題を抱えている。問題なのは,みんなが生産性を上げるため,切磋琢磨するために競争があるはずなのに,自分を高めるよりむしろ「人を蹴落とす」ことが主題になってくる。みんなパツパツだから,たしかにそうならざるをえないところがある。でも,経済競争に無理やり勝ったとしても,友達を失ったり周りがボロボロになっては,つまらないとは思わないのかという話である。

小泉新自由主義改革から民主党政権に揺り戻しているはずが,例の「事業仕分け」に見るようにやっぱり小泉流は維持されている。世間にも「競争」が大事だという考えは根強い。しかし世の中には,よい競争と悪い競争がある,という点は心しておかねばならない。本当のところ,「カネにならない仕事はやらない」というのでは世の中回らない。人々が集まって生きているからには,相互扶助は不可欠だ。そのことを民主党はわかっているのかいないのか。小沢みたいなことをしていては,自民党時代のデジャヴュではないか。

競争とかいうよりも,全体を(家計部門を)底上げすることを考えないのであれば,民主党も自民党と同じ運命を辿ることになるだろう。

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