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マスコミ批判をしてもしょうがない。それよりもやることがあるだろう

今回の記事はいくつかの不穏当な発言を含んでいるかと思うが,どうか真意をご理解いただきたい。

私はいま,留学生が3分の1いるクラスで靖国問題について議論している(英語)。留学生はアメリカ,ドイツ,オランダ,中国,台湾,などなどから来ている。アジア系の留学生がもっと来るのでは,という予想に反し,韓国からの学生がいないのが何とも残念である。やはりこのデリケートなテーマを嫌ったのかもしれない。

中身としては,日本の戦争の歴史,靖国神社の背景,神道とは何か,天皇とは何か,東京裁判とは何か,A級戦犯とは何か,中韓の立場はどうか,アメリカの立場はどうか,日本とドイツの違いは何か,などなど,さまざまのトピックに分けて報告してもらい,議論をしている。学期の半分まできたところだが,当初面白くやっていたのが,どうも議論が盛り上がらない。確かに勉強にはなっていて,特に日本のことをよく知ってもらいたいというこちらの意図自体は大当たりであると言ってよかろう。しかし小泉前首相の靖国参拝について意見を聞いてみても,ほぼ全員が「それはあかんやろ」という反対の方に回ってしまって,支持する者がいない状態である。盛り上がるはずがない。

なあんだ,やっぱりそうなのかと思うと,気が抜ける。ヘタレネット右翼なんて,その名のとおりネット上にしか沸いていないのかもしれない。これだけ情報を仕入れて合理的に考え,国籍を超えて多角的に議論すれば,変な答えなんてそうは出ないものだということなのかと,多少の安堵を覚える次第である。

この件に限らず,どうも皮膚感覚においては,つまり自分のすぐ周囲の状況を見れば,現今の日本において翼賛的言説がそんなに優勢とは思えないのである。にもかかわらず,現実に日本最大の地方政府である東京都は極右知事をいただいているし,国家レベルでもついに極右政権が誕生してしまった。ヨーロッパではルペンでもハイダーでも熱心な支持者がいる半面,大方の国民からは反発を食らっているのに,日本では何の波風もなく安倍がトップになるなんて,このギャップは何なのだろう,と思わざるをえない。

▼一つの仮説として,「情報を仕入れる」ことはきわめて能動的な作業であるので,忙しい日本人にはなかなかやっていられない,だから雰囲気に流されてしまう,ということが考えられる。皆さんご指摘のようにマスコミは全てを報道してはいない。それはインターネット上の情報を詳しく調べてみればすぐわかる。しかしこれはもう一度言うがかなり緻密な能動的作業である。私は仕事の一部だから仕方なくしているわけだが,なかなかしんどいものである。

「マスコミが,権力に屈せず,正しいことも悪いことも報道してくれればよいのに」と私も切に思う。ネット上を眺めてみても,みな異口同音にそう言っているように見える。確かにマスコミを叩くのはたやすい。

しかしもしかしたら,われわれは発想を逆転させねばならないのかもしれない。マスコミの立場になってみよう。現政権の悪口を書くとパージされることが確実であるようなマスコミの立場に。そのとき,プロフェッショナルなら命を張って正しい記事を書くべきだ,と言い切れるだろうか?

ジャーナリストも人の子である。家族もあるだろう。自分の命が危険でも記事は書けるかもしれないが,家族の命が危険なら,記事を書くことはできるだろうか。

で,私は,「それでも書け」というのは酷だと思う。

落ち着いて考えてみれば,この状況で非難されるべきは,書くべきことを書きたくても書けないでいるジャーナリストではなく,恐怖政治を布いている為政者であるに決まっている。

恐怖政治はすでに始まっているのである。だから,逆に考えよう。われわれ国民が,マスコミを政府の圧力や介入から守らなければならないのではないか。われわれがマスコミを擁護しなければ,マスコミは本来の機能を果たせないのではないか。現在マスコミが機能不全であるのは,ジャーナリストたちの安全が保証されていないからで,それはわれわれの力が足りないからではないのか。

それは政府の力は絶大だろうが。あと産経や読売はこの限りにあらずとも思うが。

まあそうは言っても,いずれ一市民ができることは大してない。せいぜいネット検索をして,能動的に情報を集めて,取捨選択して,マスコミも追随できそうな世論にもっていくというような,ある意味遠大な作業か。それでも,嬉しがってマスコミ批判などしていても仕方がないのは確かだ。

▼最近,イーホームズの藤田東吾社長が,まるでドンキホーテさながら,一人で国を相手に闘っている。例のきっこのブログを中心に情報が入ってくる。悪く言う人もいるようだし,本当に信用できる話なのかどうか,私も事態を注視しているところである。

動画でしゃべっている彼の言い分を聞いていると,なるほどそういうことかと思うと同時に,対立する側の国交省やもろもろの当事者の反論を聞きたくなる。対立する側の言い分が全くわからない以上,現在のところ藤田社長の言い分は筋が通っていると聞こえても仕方がない。実際彼の告発を聞くことで,1年前には訳がわからなかった不連続な点と点が線になってきた。

阪神大震災のときにも,某ゼネコンの物件ばかりが選択的に倒れており,その際にも若干いろんなことが噂になったのではあるが,おそらく彼の言うとおり,日本には無数の改竄物件が現に建っており,そこに居住する人々が多数いるということなのだろう。お叱りを受ける覚悟であえて言ってみるが,震度5強以上の地震が起きる頻度は関西では70年に一度である一方,日本の家屋の耐用年数はせいぜい30年そこそこであり,つまりは建物が建っているあいだに強い地震が起こるのは確率論的な問題ということになるので,あまりにも頑強な建物を建てるのは「オーバースペック」だ,と考えることもできるかもしれない。だから震度5強に耐ええなくても30年建ち続ける建物ならばコスト削減ということでまあいいか,という考え方もアリかな,と私も思わなくもない。ただこんな呑気なことを考えられるのも,私の実家(東灘区)がたまたま倒壊しなかったからかもしれない。

しかしいずれ,もちろんルール違反ではあるわけだ。たぶんこんなことは業界では「公然の秘密」であろう。うっすらとした記憶に「50キロのところを57~8キロで……」などとのたまった御仁もいたが,そのような種類の,罪の意識の薄いルール違反だ。世の中にはそうした,えーっと今の今まで赤信号をみんなで渡ってました的な「公然の秘密」はいくらでもある。

もしこんなのを究明してしまっては現政権に絶大なダメージが出る(らしい)。何といっても安晋会が,つまり現首相が絡んでいるというではないか。何人,何十人,下手をすると何百人の,大臣や高官の生首が飛ぶ。これは政府側は何としても避けようとするだろう。政府が藤田氏を早く黙らせるもっとも簡単な方法は,証拠をもって彼を論破することである。それができれば藤田氏は黙るしかないだろう。しかるに,政府は今のところそうできない様子というか,情報がちぐはぐで線にならないので,どうしても疑わしく思えてしまうのである。

本当は,履修不足という「公然の秘密」を暴いたのだから,耐震強度不足という公然の秘密もまた暴かれなければ,公正さを欠くはずだろう。

はっきり言うが(ぜったい怒られるから言いたくないけど),私に言わせれば,履修不足の問題など芥子粒ほどの小さな問題でしかない。全国の高校の校長先生に言いたいが,こんなことは自殺するようなことではない。まあ社会科で手を抜かれるのは確かに困るが,授業をやっていて単位が出ていても現実にどれくらい授業参加がなされているかは全く不透明だからだ。毎回寝てる奴もいるし。学校間格差の問題もあるし。単位が出ていても出ていなくても,そのことは所詮形式的で表面的な問題にすぎない。高校が卒業してよしと判断したレベルなら,それをさらに外野がどうこう言うのは杓子定規すぎるし,大したことない者どうしの足の引っ張りあいにしかならないし,何十年も黙認しといて今さら何だよというのが大学人の本音である。どうせこれも教育基本法改正にもっていきたい安倍流のいやらしい手口かと白けるばかりだ。それでも「悪いことはやっぱり悪い」とおっしゃる方には,どうぞはるかに重大な帰結をもたらしうる耐震偽装問題のほうも,真相を究明せよと声高に叫ぶことをぜひお願いしたい。

▼その教育基本法にしても,やはりわれわれには必要な情報と知識が不足している。ネットにはいろいろ出てきてはいるが,さまざまな知識が人々に浸透する前に「強行採決」が行われている以上,そしてそれが与党の戦略である以上,仕方がない。それはそれとしてあきらめつつ,われわれにはいずれにせよ能動的な研究が必要不可欠である。これについてはまた改めて書こうと思う。

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